COLUMN | 売りにくい物件
親が住んでいた家は親のものでも、その下の土地は地主から借りていた。いわゆる「借地」の上の家を相続すると、ふつうの空き家にはない確認ごとが増えます。
このページでは、借地の上の空き家を相続したときから、相続放棄・解体・売るまでの場面ごとに、法律で決まっていることと、先に確かめておきたいことを、法令や裁判所・国税庁が公表している情報をもとに整理します。
借地の上の家をどうするかは、次の順に確かめていくと決めやすくなります。それぞれの理由は、このあとの見出しで説明します。
古い借地では、契約書が見当たらないこともあります。その場合は、手元にあるものから手がかりを集めます。
空き家のご相談は、人生の節目のご相談だと思っています(代表メッセージより)。借地の上の家は、相続人どうしだけでなく、地主とも話をすることになります。急いで決めずに、上の順番でひとつずつ確かめてから、どうするかを決めてください。
借地借家法では、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」を借地権と呼びます。建物は自分(親)のもの、土地は地主のもので、土地を使う権利を借りている、という形です。土地の賃貸借であれば、地主に地代を払います。
借地権を設定したときの存続期間は、今の法律では30年です。契約でこれより長い期間を決めていれば、その期間になります。
ひとつ気をつけたいのが、借地権がいつ設定されたかです。今の借地借家法は平成4年8月に施行されました。それより前に設定された借地権は、更新や、建物が古くなって朽ちたときの扱い、建て直したときの期間の延長などについて、法律の附則で「なお従前の例による」とされ、古い法律(借地法)のルールが使われます。親の代から続く借地なら、最初に借地権が設定された時期は、まず確かめておきたい項目です。更新のたびに契約書を作り直している場合もあるため、手元の契約書の日付だけでなく、もとの契約がいつだったかを見てください。
民法では、相続人は「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を引き継ぐとされています。借地の上の家を相続すると、建物と一緒に借地の権利も引き継ぎ、地代を払う義務も続きます。
相続のあとに最初にやっておきたいことは、上の「まず確かめる順番」のとおりです。
家を使っていなくても、地代を払う義務は続きます。支払いが途切れていないかは、早めに見ておくと安心です。建物の名義が亡くなった方のままの場合の扱いは、名義が古い・住所が違う空き家を売る前にのページも参考にしてください。
借地の上の家は、地代がかかり続けるうえ、借地権が土地の賃借権の場合は売るにも地主の承諾が要るため、「いっそ相続放棄を」と考える方もいます。
相続放棄をすると、民法939条により「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます。借地の権利と家だけを手放すのではなく、預貯金なども含めて、その相続そのものから外れることになります。
また、放棄したからといって、すぐにすべての責任がなくなるわけではありません。放棄の時にその家を現に占有していた場合は、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意をもって保存しなければならないとされています(民法940条)。手続きの期限や、管理の責任が残る場面については、相続放棄すれば空き家の管理義務から解放される?で詳しく書いています。
古くなった家を壊して更地にしてから考えよう、という順番は、借地では一度立ち止まりたいところです。
借地借家法10条では、借地権の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を持っていれば、借地権を第三者に主張できる(対抗できる)とされています。つまり、建物があり、その登記があることが、借地の権利を守る役目を果たしています。
建物がなくなった場合でも、建物を特定するための事項、なくなった日、新しく建物を建てることを、土地の見やすい場所に掲示すれば、効力は続きます。ただし、なくなった日から2年を過ぎた後は、その前に新しい建物を建てて登記した場合に限られます。
さらに、借地の期間が満了して契約が更新されないときは、借地権者は地主に対して、建物を時価で買い取るよう求められます(建物買取請求権・借地借家法13条)。先に取り壊してしまえば、買い取ってもらう建物はなくなります。
ただし、この建物買取請求は、どの借地でも使えるわけではありません。平成4年8月の施行とともにできた「定期借地権」では、存続期間を50年以上にしたうえで、更新をしないことや、建物の買取りの請求をしないことを、書面で取り決めておけます(借地借家法22条)。国土交通省の解説でも、定期借地権ではこの建物買取請求ができなくなり、借地人が建物を取り壊して土地を元に戻して返すのが基本とされています。借地の種類と、期間が終わったときの建物の扱いは、契約書で確かめてください。
壊すかどうかは、契約書の取り決め、借地の種類(定期借地権かどうか)、借地権が設定された時期(平成4年8月より前かどうか)、地主の意向、そして直して使えるかを確かめてから決めても遅くありません。解体の費用の考え方は空き家の解体費用の相場の決まり方と、壊さない選択肢にまとめています。
アキヤムスブにご相談いただいた場合は、壊すかどうかを決める前に、その家が直して使えるかを先に見ます。自社で施工も行っているため、傷んだ状態の家でも直せるかをその場で判断できます。借地では、建物が残っていること自体が、借地の権利を守る役目を持っています。
借地権が土地の賃借権の場合(地代を払って土地を借りている形)、借地の上の家を第三者に売ると、土地の賃借権も一緒に移ることになります。民法612条では、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡せず、承諾なしに第三者に使わせたときは、賃貸人は契約を解除できるとされています。借地の上の家を売るには、まず地主の承諾が要る、ということです。
地主が承諾しない場合の道も、法律に用意されています。借地借家法19条では、家を譲り受ける人が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず、地主が承諾しないときは、借地権者の申立てにより、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えられるとしています。この手続きは「借地非訟」と呼ばれます。許可が必ず出るわけではなく、裁判所は残りの期間やこれまでの経過など一切の事情を考えて判断します。条件の変更や、財産上の給付(お金の支払い)を条件に許可されることもあります。
この申立てがあったとき、地主は、裁判所が定める期間内に、自分が建物と借地権を買い受けると申し立てることもできます(借地借家法19条3項。いわゆる介入権)。
大阪地方裁判所のホームページには、借地非訟の類型ごとの申立書の書式と、用意しておく書類が載っています。賃借権の譲渡の許可では、土地と建物の全部事項証明書や賃貸借契約書などに加えて、借地権を譲り受ける予定の人の住民票(法人なら全部事項証明書)や、資力を証明する書面が挙げられています。
裁判所の手続きは、地主が承諾しないときの道です。まずは地主と話すところから始まります。地主の考えによって、地主が自分で買い取る、譲渡を承諾する、といった道が考えられます。どの道を取るかで手元に残るものも変わるため、地主に話を持ちかける前に、契約書と登記をそろえて、全体の見通しを立てておくと話が進めやすくなります。
その見通しの材料に、無料の査定を使っていただけます。査定をしたからといって、売却を迫ることはありません。家の状態と、売るならどう見えるかを知ったうえで、持ち続けるか、地主に話を持ちかけるかを決めてください。
相続した空き家を売ったときに使える「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(いわゆる3,000万円特別控除)は、借地の上の家でも対象から外れるわけではありません。国税庁の案内では、特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」に、土地だけでなく「その土地の上に存する権利」が含まれるとされています。
ただし、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたことなど、ほかの要件をすべて満たす必要があります。要件の全体は相続した空き家と税金——3,000万円特別控除のことで整理しています。実際に使えるかは、税務署や税理士にご確認ください。