COLUMN | 貸すか売るか
/
相続や住み替えで空き家になった家を、貸すか売るか。迷ったときは、先に2つのことを確かめると判断が進みます。
1つ目は、その家を貸せる状態にするために、どれだけお金と手間をかけるのか。2つ目は、相続した家の場合、売るときに使える税金の特例が、貸すことで使えなくならないかです。
貸すか売るかを決める前に、しばらく空き家のまま置いておく場合も考えてみます。このページでは、貸す・売る・置いておく、それぞれの負担と、見落としやすい制度の話を整理します。
貸せば家賃という継続的な収入が期待できますが、その前に、貸せる状態に整えるための費用がかかります。古い家では、水回りや設備の修繕、耐震性の確認などで、まとまったリフォーム費用が必要になることが少なくありません。いくらかかるかは家の傷みで大きく変わるので、見てからお答えします。その費用を家賃で回収するまでに何年かかるかも考えておく必要があります。
貸した後も負担は続きます。貸主には、住んでもらうために必要な修繕をする義務があります(民法606条。入居者の責任で傷んだ場合を除きます)。設備が壊れたら直す、雨漏りがあれば直す、という対応は貸し続けるかぎり続きます。入居者が決まらない期間も、管理の費用や、原則として固定資産税はかかります。管理会社に任せれば、その管理費用もかかります。
相続した空き家を売ったときには、条件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306)。令和6年1月1日以後の譲渡で、その家と敷地等を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は、最高2,000万円になります。
この特例の要件の1つに、相続の時から売る時まで「事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと」があります。つまり、いったん貸してから売ると、この特例は使えなくなります。特例の対象は令和9年12月31日までの譲渡で、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることも要件です。
自分が相続した家が当てはまりそうかは、まず次の点で確かめられます(国税庁 No.3306 の要件のうち主なもの)。
「しばらく貸して、いずれ売る」と考えている場合は、貸す前にこの点を確かめておくことが大切です。適用できるかどうかは個別の状況によるため、税理士にご確認ください。特例の概要は「相続した空き家を売ったときの税金と3,000万円特別控除」にまとめています。
リフォームの費用がかかりすぎる場合は、借りる人が自分で手を入れる形の賃貸もあります。国土交通省は、借主の意向で改修を行う賃貸借を「DIY型賃貸借」として、契約書式の例やガイドブックを公開しています。
この形では、どこをどう直してよいか、退去するときに元に戻すかどうかを、貸主と借主の双方が合意したうえで書面を取り交わします。貸主は修繕費を抑えられ、借主は自分好みに手を入れられる、という組み合わせです。ただし、借りたい人が見つかるかどうかは立地や建物の状態によります。
将来は自分や家族が住むかもしれない、いずれ売るつもりだという場合は、期間を決めて貸す「定期建物賃貸借」という方法もあります(借地借家法38条)。
書面で契約すれば、契約の更新がなく期間の満了で終わる形にできます。ただし貸主は、契約の前に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を渡して説明しなければなりません。この説明をしないと、更新しないという約束は無効になります。
旅行で訪れる人に泊まってもらう「民泊」として使う道もあります。今の大阪で使える手続きと、確かめる順番は、空き家を民泊にできるかにまとめています。
売却の大きな特徴は、まとまった資金が一度に入り、その後の管理の負担から離れられることです。ただし、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者にかかるため売った年の分は残り、売って利益が出れば譲渡所得の税金もかかります。古い家をそのまま手放せる売り方を選べば、貸すためのリフォームの投資も避けられます。
一方で、売ればその家から収入が生まれることはなくなります。将来の収益の機会を手放すことにもなるので、管理の手間や修繕の負担から離れることをどこまで重く見るかで、評価が分かれます。
貸さず、売らず、空き家のまま持ち続けることもできます。家賃や売却代金は入りませんが、固定資産税や管理の費用はかかります。
固定資産税は、空き家でもかかり続けます。住宅用地特例の対象となる土地では、固定資産税の課税標準は、住宅1戸当たり200㎡までの部分が評価額の6分の1、それを超える部分が3分の1になります。対象面積は家屋の延床面積の10倍までで、店舗併用住宅などでは対象範囲が異なります。ただし、管理が行き届かず、市区町村から管理不全空家等や特定空家等として勧告を受けると、この特例の対象から外れます(空家等対策特別措置法)。勧告までの流れは「空き家を放置するとどうなる」にまとめています。
建物の傷みにも注意が必要です。瓦が落ちて通行人がけがをした、塀が倒れて隣の家を傷つけた、という事故で、建物や塀の設置や管理(保存)に欠陥があったときは、まずその建物や塀の占有者が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしていた場合は、所有者が賠償しなければなりません(民法717条)。誰も住んでいない空き家では、所有者が責任を問われる立場になると考えておくのが安全です。見回りや草刈りなどの管理の手間と費用は、置いておくかぎり続きます。
相続した空き家の3,000万円特例は、貸さずに置いておくなら、使える可能性は残ります。ただし、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の1つなので、特例を使うつもりなら、置いておける期間には限りがあります。
貸すほうを検討しやすいのは、次のような場合です。
売るほうを検討しやすいのは、次のような場合です。
しばらく置いておくほうを検討しやすいのは、次のような場合です。
置いておく場合も、特例の期限と建物の状態を確かめ、方針を見直す時期を決めておくことが大切です。
実際にどちらが向いているかは、建物の状態や立地、ご家族の事情によって変わります。代表の私は内装金物の施工を専門とする会社を別に営んでおり、建物の傷み具合を見たうえで、貸すためにリフォームするより売ったほうが合う家かどうかも含めて、無料でご相談をお受けしています。
立ち会いなしでのご相談も可能です。売り方の選び方は「大阪で空き家を売りたい方へ」でも整理していますので、あわせてご覧ください。